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故郷行 中国・家族のルーツをたどる旅 

NHK土曜ドラマ「遥かなる絆」のモデルになった中国残留孤児の城戸幹(きど・かん)さんが、娘の城戸久枝さんと中国を訪ねる旅を描いた45分のドキュメンタリーでした。

うーん…………尺のせいもあると思いますが、期待が大きかったせいか、残念ながら「薄い」仕上がりでした。

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ドラマでは描かれなかった部分、例えば文化大革命のなか「スパイ」容疑がかかっていたこと(ドラマでは単に監視されているとしか表現されていない)、それを見かねた養母の淑琴さんがこのまま中国にいて殺されてしまうなら日本に帰ったほうがよい、と後押ししたことなどはとても興味深かったです。

一方で、旅そのものが何ともいえない雰囲気で…特に、久枝さんの過剰なまでの父親との密着が、あれ、中国風なんでしょうか?常に父親の腕をとって歩いたり、ちょっと違和感が。

そして、ドラマにも登場したジェジェ(お姉さん)が現れたので、牡丹江で、日本民族として生きていくようになってから「玉福」を支えた親友の徳義さんとか出てくるのかと思ったら出てこなかった。

そのかわりに牡丹江の中学校の同窓会や頭道村でのリユニオンにそれなりの時間を費やしていました。

もちろんドラマと実際の人生ではめりはりが違うのでしょうけれど、やっぱり父と娘の密着と似たような違和感を感じずにはおれませんでした。

なんだか、微妙な45分間でした。
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有縁分 遥かなる絆〈6-最終回〉 

ふたたびの河

いいお話でした。でも、なんだか、ちょっと押しつけがましい感じのする最終回だった気がします。いつもに増して久枝(鈴木杏)の抑揚のない感じのナレーションが多かったからかも。

土曜ドラマ「遥かなる絆」はNHK総合で放送を終了しました。

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ナレーションだけでなく、淑琴さん(岳秀清)が亡くなったことを知らせる春華(ジェジェ)からの電話を受ける幹(加藤健一)にぱーっとスポットライトが当たったり、ラストに頭道河子村(トウドウカシムラ)を訪れた久枝の前に現れる謎のざしきわらしとか、ちょっと浮いていたような…。

どっちみちドキュメンタリーチックな作品なんだから、視聴率を気にするようなドラマでもなさそうだし、そういうわざとらしい演出を排してうんとドライに描いたほうがよかったように思います。

さて。

さすがに私もNATO軍の中国大使館誤爆の話をしてるときにいきなり"But I hate Japanese!"と吐き捨てる中国人学生の描写にはどん引きでした。いったい、どういう思考回路?暴力というと反射的に日本のことを思い出すように教育しているのだろうかと思ってしまいました。

ただ、これに似たことは実は日本にもあって、巨大掲示板なんかを覗いていると、どうして?という場面ですぐ「○×乙!」(○×はなんでもイイ)って決めつける人少なくないし、こじれた気持ちというか、ボタンのかけ違いはそう簡単には直らないのだろうな、と思うしか…。

それだけに、どんなときも幹(玉福)を暖かく見守り続け「友情は変わらない」とはっきり言ってくれていた呉立政おじさんが肝臓がんで亡くなっていたのを、玉福が悲しむと思って知らせなかったという場面は本当に悲しい気持ちになりました。

立政さん・徳義さんや春華さんの暖かさは十二分に伝わってきました。春華さんが言っていた「特別な縁があること=有縁分」は民族や思想とは関係ないのだ、ということも。

なので、久枝の留学生としての葛藤の描写は劉(フービン)にガツンと言われて凹む程度でまったく足りなかったと思うし、2年の生活から得た結論が「父の物語と戦争のことを、自分に子どもが産まれたら伝えてゆきたい」という、意外と月並み?なことになってしまったのは、ちょと残念でした。

このドラマは春華さん(王維維)と青年時代のひたむきな玉福を演じたグレゴリー・ウォン、そして淑琴さんの3人でもったドラマだな~と感じます。


で、劉さんとはどうなったんですかねw

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「遥かなる絆」、31日にドキュメンタリー放送 

NHKの土曜ドラマ「遥かなる絆」、あまりレビューを書いている人が多くないせいなのか(汗) 私のところに訪問してくださる方がOA直後はけっこう多いのに驚いています…。

さて、ドラマの主人公の城戸久枝(きど・ひさえ)さんとお父様の城戸幹(きど・かん)さんに密着したドキュメンタリーが31日にNHK総合で放送されることになりました。二人が出演し、養母と過ごした中国東北部黒龍江省の村や高校生活を送った牡丹江市などを訪ねるドキュメンタリー「故郷行 中国・家族のルーツをたどる旅」を放送します。3月6日に四国地方(城戸さんたちは愛媛県在住)で放送した番組とのことです。

以下、NHKドラマトピックスより引用です。

放送:総合テレビ
5月31日(日)午後4時~4時43分四国スペシャル「故郷行 中国・家族のルーツをたどる旅」
※近畿地方、中国地方は別番組。
近畿地方では6月7日(日)後4:05~4:48(総合テレビ)
広島県、島根県、鳥取県では、6月5日(金)後8:00~8:43(総合テレビ)
に放送します。

ここまで引用です。

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自立 遥かなる絆〈5〉 

果てしない旅

玉福こと幹(かん=グレゴリー・ウォン)、ついに祖国日本の土を踏む。でも、なかなか「ソフトランディング」とはゆかないわけで…。父の弥三郎(浜畑賢吉)との、気持ちのすれ違いが痛々しかったな…。

遥かなる絆」はNHK総合で土曜21:00から放送。次回が最終回。



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中国では、牡丹江の駅で旅立つ玉福を見送って倒れた養母の淑琴さん(岳秀清)が3日寝たきりになり、目覚めたときには髪が真っ白になってしまっていました。彼女の心情は察するにあまりあり……。

帰国した幹は、日本語という厚い壁にぶつかっていました。中国で優秀だったことが裏目に出たというか、たぶん基本的にプライドの高い人なので、ことばができないもどかしさのようなものが、普通の人よりもきっと強かったのだと思います。

そして、自分でももどかしいのに、父の弥三郎には「結局のところ、幹の努力が足りない」と言われてしまいます。

大学にゆきたい、という幹には「尚早」とだけ書く父。

多余的人(よけいな者)

ではないか、と苦しみ始める幹。そんなふたりを見かねた母(伊藤榮子)が松山に住む弟(松沢一之)に、彼が勤める建設会社で働けないか持ちかけました。日本語が喋れない幹に対してこの人がした「入社テスト」が、漢字を書けるかどうか。漢字をきちんと書くことができたため、入社OKとなりました。

松山で下宿も世話してもらい、定時制高校に通う段取りもつけます。もともと優秀だったこともあって、高校は飛び級で1年から3年に進級、陵子(佐藤めぐみ)という友人もできました。

県庁所在地である松山と、田舎町である八幡浜ではいろいろと事情が異なっていたのかもしれませんが、一足飛びに「大学に行きたい」ではなく、家族と同居しながら、昼間は家のみかん農園を手伝いつつ定時制高校に行く、といったことはできなかったのかなとちょと疑問。

厳しい父と一緒に暮らしていても、お互い傷つけ合ってしまうだけという判断だったのかもしれないけれど、25年も別れ別れで、結局家族として一緒に暮らせたのは3カ月だったというのは、なんだか、残酷でした。

陵子と結婚、久枝(鈴木杏)を含む子どもも次々に生まれて充実した生活を送る幹のもとに、弥三郎が倒れたと知らせが入り、意識のない弥三郎の枕元でシベリア抑留を経験していることなどを聞くシーンに、ますますそう思いましたね。

現代編では、中央大学に留学することが決まった劉(フービン)と久枝の様子が描かれます。久枝は父の幹(加藤健一)に、劉の日本での保証人になってくれるよう頼みました。劉には一緒に東京の大学で勉強しようと言われ、揺れる久枝でしたが結局、中国にもう1年残ることを選択します。

幹の人生がドラマティックでありすぎるだけに、久枝の経験にもう少し深みがほしいなと感じます。最終回で少しまた出るようですが、日本と中国の大学生のあいだにあるギャップのようなもの、歴史認識、そうしたことを久枝はどう受け止めて咀嚼するのか。そこがドラマの本当のキモであるべきのような、気がしました。

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信念が奇跡に 遥かなる絆〈4〉 

牡丹江の別れ

厳しい文化大革命のさなかに玉福=城戸幹(グレゴリー・ウォン)が帰国できたのは「奇跡」としか言いようがないと改めて思いました。迫害が監視以上の実力行使に及んでも不思議ではなかったのに……。というか、ドラマでは描かれなかったエグい迫害もあったのでしょうね。当時は政治もめちゃめちゃだったと思うのですが、本当に不思議。

遥かなる絆」はNHKで土曜21:00から放送。

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文化大革命について、何か参考になる本はないかとamazonを探してみたのですが、比較的軽い気持ちで読めそうなものはなく………それだけまだ生々しい歴史ということなのかと思い、ちょと背筋が伸びました。

玉福は常に監視される状態が続き「別の道を歩いている」と職場でも噂が流され、ふたりの親友とも話せなくなり、酒浸りの暮らしになってしまいます。

と、一文で書いちゃったけど、親友たちは玉福をかばってけんかしてくれ、30年後に久枝(鈴木杏)にも「民族は違っても心はつながっていた」と胸を張って話してくれるアツイ人たちでした。

みんなが目立たぬように、崖から転がり落ちぬように、というような気持ちで暮らしていたに違いない時期に「何がなんでも日本に帰る」とたびたび公安局に直談判に行ったり日本に手紙を書いたり…本当にスパイ容疑とかでぽいっと「労改」とかに送られなくてよかったと思います。

酒浸りになってよれよれの玉福を立ち直らせたのはやっぱり淑琴さん(岳秀清)。子ども時代の玉福にも手をあげる場面はなかったはず。なのに

「日本のお父さんとお母さんに申し訳がない」

と叩いて叱咤するところでは涙が。

養母の暖かい気持ちに触れて、帰国はあきらめてふたりで暮らしてゆこうと決意して前向きになったところに、奇跡の帰国許可の知らせが届きました。

いざ帰国が決まると、やはりひとり淑琴さんを残してゆくことに心残りはたくさんある玉福。ひとりになってしまった後、生活はどうするのだろうと気がかりだったのですが、かなりの額のお金をたんす貯金していたんですね。

字が読めない淑琴さんが、玉福の日本の住所と本名の「城戸幹」を紙に書き残してほしいと頼むところ。結婚して子どもを産んで、ひとりは中国にほしい、と言うところ。ふたりで出かけ、凍った牡丹江のそばでふたり「植樹歌」を歌うところ…。

気丈にふるまっていた淑琴さんが牡丹江駅の駅頭で最後倒れてしまい「行かないでおくれ」と本音が出てしまった場面は本当に切なかったです。

淑琴さんがいなかったらのたれ死んでいたかもしれないし、農村の労働力としかみない誰かに拾われてただただ働くだけの人生になっていたかもしれない。すべての扉を開いてくれたのは淑琴さんだったということをいちばん理解していたのは玉福だったと思うので、別れの場面は身にしみました。

現代編では体調が回復した久枝が牡丹江で春節を過ごします。

ジェジェこと春華(シュンカ)さんがなぜ淑琴さんと10歳のときから暮らしていたかも話してもらいました。家が貧しかった春華さんは弟が生まれて生活力が足りない両親のもとでは暮らせなくなり祖母(淑琴さんの姉妹?)のところに預けられ、その祖母が亡くなったために牡丹江に住む淑琴さんのところへ移り、淑琴さんが死ぬまで同居した、と教えられました。

かつて淑琴さんが玉福の尽力で頭道河子村から牡丹江に移り、戸籍が農村から都市になったように、春華さんは淑琴さんのもとに身を寄せたことで都市の戸籍を得ることができて貧困から脱出できた、と語ります。

日本でのんびり暮らしていては想像もつかないような人生を歩んでいる「中国の親戚」たちが自分のことを親戚として受け入れてくれることに心を動かされる久枝が寝床で見せた涙が印象的でした。

春節の休暇を終えて吉林に戻ってきた久枝を迎えてくれたのは劉(フービン)。ふたりのわだかまりも消え、ちょっとイイ感じになってきます。劉の母親は元教師だったのがいま農業をやっているということで、劉は玉福が淑琴さんを牡丹江に呼び寄せたように、自分は母と東京で暮らしたいのだと夢を打ち明けます。

牡丹江でジェジェが話してくれた「貧困からの脱出」のことを思い出すと劉の母親は逆に都市部で暮らしていたであろう知的階級から農村へ、貧困へと転落してしまったことになるわけで…久枝に怒りをぶつけた劉の気持ちが少し理解できた気がしました。

とはいえ劉は、なぜ一般的な中国人が口をきわめて罵っている日本を将来の夢の行く先として選ぶのかが気になりますが、そこまでは描かれないかな…。

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→この作品で描かれる残留孤児だった主人公の文化大革命は息を呑むほど過酷でした。内モンゴルの労改での生活、破傷風にかかって死にかけても日本人だという理由でなかなか治療をしてもらえず死にかけ……。そんな主人公を助けるのは養父の捨て身とも思える献身的な運動でした。

葉落帰根 遥かなる絆〈3〉 

祖国へ

文化大革命をもっとがっつりやるのかと身構えていましたが案外さくっといくようですね…。「大地の子」があるのでかなりハードなのを想像していたので……。

友だちはふたりとも懐深くて優しいし、お母さんの淑琴さん(岳秀清)はひとり耐えて泣いてるけど変わらず優しいし、玉福(グレゴリー・ウォン)、いまのところかなり恵まれてると思います。

遥かなる絆」はNHK総合で土曜21:00から放送。




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「大地の子」でも、養父母が歯を食いしばるようにして高等教育を受けさせた主人公の陸一心(上川隆也)と対照的に、労働力としてこき使われ、若くして死んでゆく生き別れの妹(永井真理子)が描かれていました。

久枝(鈴木杏)が劉(フービン〈胡兵〉)の誘いで教えるようになった残留孤児とその子どもたちのための日本語学校でも、大学を出て眼科医として働き、日本語がめきめきと上達する李さんと、労働力として満足に学校に通えていないため日本語の習熟に苦労するもうひとりの残留孤児の姿が…。

今回はこのほかにも「満州花嫁」ということばも出てきます。満州に渡った日本人と結婚したものの相手が戦死し、中国人男性と再婚して中国人として生きてゆこうとしたおばあさんが久枝を訪ねて昔の話をする場面が非常に印象的でした。

そのことを「いや~お父さんったらそんなことすると思わなくて意外~!」という感じにさくさくっと劉に喋った久枝が劉の怒りにふれてしまう、という展開には、現在の日本の若い世代が共通して抱えているであろう「歴史認識の『段差』」のようなものを色濃く感じずにはいられません。

さらに、劉の怒りの根底には、彼本人が中国の「不幸な過去」のせいで父親を自殺(中国では特に忌むべきこととされる)で失ったことやそれに伴って極めて貧しい生活を送ったであろうことが推察される、という李さんの解説がありました。

中国の人たちから厳しいことばを投げつけられて凹む久枝なんですけど、どうしてお父さんの幹(加藤健一)の日記を読むということ以外に積極的に中国の近代史を勉強してみようとしないのかな~なんてちょっと思ったりしました。

さて。

前回、なぜ幹=玉福が恩のある義母をある意味さしおく形で日本の両親を求めるのか、日本人を名乗ることで受けるデメリットのほうがメリットよりも大きいはずなのに、と書きましたがはからずも帰国を目指す李さんが説明してくれました。

「葉落帰根」

最後は祖国に戻ってゆくもの、ということばが重かった。とはいえ、玉福の執念は今後予想される、文化大革命による迫害の前からなので、その一途さはまた特別なものだったと思います。

200通の手紙を6年かけて日本赤十字に出し続け、ようやく返事が。そこには、玉福の終戦当時のことを細かく書くようにとあり、玉福は占い師の寧(薄宏)を訪ねます。

淑琴さんのなみなみならぬ苦労を知る寧は最初、昔のことは何も覚えていないとすっとぼけますが、後から詳しいことを教えにきてくれました。

それで、玉福は服についていた名札に「城」「蔵」の字が書かれてあったことや、父親が満州国軍の少佐で、勃利に住んでいたことなどを知るのでした。

イヤァ、それにしても「検閲」とか、国交のない国にどうやって郵便出すのとか、どうしたらそんな国に出国できるのなどなど、そりゃ、胃潰瘍にもなってもおかしくないだろうと思わずにはいられませんでした。

玉福のまさに血を吐くような努力の末に、両親は愛媛県の八幡浜市に健在であることがわかります。手紙を受け取った父親(浜畑賢吉)が母親(伊藤榮子)に「幹の年はいくつか」と聞くとすかさず「24歳と11カ月です」と返す場面では思わず涙が出ました。

さらに、帰国の手続きをしようとして許可が下りず、当局の監視を受けるようになった玉福にあくまで優しい親友ふたりもすばらしすぎです…。久枝が中国にきたお祝いの会にふたりとも来ていたので、最後まで親友でいるんですよね。

次回はいよいよ文化大革命の混乱を乗り越えて帰国が決まるようですが、どんなウルトラCでそんなことが実現したのか、ちょっと来週が楽しみです。

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まっすぐ 遥かなる絆〈2〉 

日本孤児

「最初の挫折」で家でいきなり酒浸りになっている玉福(グレゴリー・ウォン)にちょっと引きましたが、日本へのこだわり、そして

「車到山前必有路」(車 山前に到りて必ず路有り)

を心の支えに頑張り続ける前向きさに素直に感動。さらに言うと、玉福が優秀だったこともあると思いますが、お母さんの淑琴さん(岳秀清)はもちろん、「車到山前必有路」を贈った高校の恩師、臨時教員として採用された中学校の董書記、そして製材所でできた親友ふたりなど、支える人にも恵まれていると強く感じました。

遥かなる絆」はNHKで土曜21:00から放送。

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→久枝(鈴木杏)と親しくなる中国人大学院生の劉を演じている胡兵(フービン)が登場していたドラマ。視聴は見事に挫折しましたがw

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「日本鬼子」と蔑まれたことが根底にあるためなのか、玉福が「日本人であること」にこだわった点については少し不思議なような気がします。

民族欄に「日本」と書いて、成績的には合格していた北京大学をはじめ大学入試は門前払い。学校の先生にも今すぐ取り消すべきと言われていたのに。

20歳まで「無国籍」を続けていて、最終的に日本国籍を選択、董書記には「君のやったことはあまりにも若すぎる」と指摘されていましたが、日本語もほとんど解さず、国籍を中国としておけば、大学への入学も可能だったかもしれないことを考えると純粋というかまっすぐというか…。

尊敬します。

トウドウカシムラの書記さんですらムリではないかと言った、淑琴さんの牡丹江への転出も実現させてしまう行動力も、素晴らしいと思います。

だからきっと、最終的に自力で日本に帰国することができたんでしょうね…。

それにしても、大学はともかく、高校といえば中国ではかなりの高学歴というようにドラマでは描かれていたのに、最終的には製材所での肉体労働しか選択の余地がなかったというのは、やはり玉福が日本人だったからなのか、それとも時代なんでしょうか?

一方の現代パートでは、中国人のクラスメートに日本の過去の行為を責め立てられてぐぅの音も出ない久枝がなかば気の毒でもあり、中国に留学するということの意味をその程度にしか認識していなかったのかという点ではちょっと驚きでもありました。

そうした彼女の素朴な驚きや混乱が、父の過去を知ろうという原動力になっていったことは想像に難くありませんが、お父さんの幹さん(加藤健一)も、もうちょっと娘に大切なことは言ってあげてもよかったようにも感じてしまいます。

ガテンなジェジェこと春華(王維維)のたどってきた道といい、気になる展開では、あります。

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