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日本が原爆をつくる? ジパング〈11~20巻〉 

ようやく、かわぐちかいじの「ジパング」を20巻まで読了…。いま40巻まで出てるわけだからやっと折り返しです。道はまだまだ遠いですね。興味深かったのは「歴史の揺り戻し」の部分かな…。

つまり、歴史を動かしてその場は変わっても、結局は別のイベントが発生して動かす前の結果と似たようなことになるというアレです。宮部みゆきの「蒲生邸事件」でタイムトラベラーが悩んでいた話ですね。

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とりあえず最大戦速で読み飛ばしているので、登場人物の微妙な描き分けでちょっと混乱してたりします。例えば滝と角松がこんがらがったり、麻生と柳が微妙にわからなかったり。速度を少し落とせば状況的にわかるんですけどね(汗

以下各巻ごと、ネタバレ感想です。

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ドラマ「ストックホルムの密使」 

佐々木譲原作の小説「ストックホルムの密使」が「エトロフ遥かなり」(原作:「エトロフ発緊急電」)と同じスタッフでNHKの土曜ドラマになっていたことを最近知りました。DVD化はされていないものの、横浜・日本大通りにある「放送ライブラリー」でドラマを閲覧できることを併せて知ったので、わりと近所なのでさくっと行って、観てきました。

「放送ライブラリー」の入った建物「映像ライブラリー」は横浜地方裁判所のはすむかいにあり、文字通りテレビやCMなど各種映像のデータベースで、無料で利用できます。このため、お昼を過ぎたころには50以上ある閲覧ブースはほぼうまっていました。


放送ライブラリーの1階ロビー客層は(結果としてですが)この写真に映ってる感じの、わりと年配のおじさまたちが多く、女性が少なかったのが特徴。


利用方法は、受付階のある8階にあるデータベース端末で観たい番組を検索、選択すると紙製のカードが出てきます。このカードを受付に出すと視聴するブースを指定され、そこでカードに印字された4ケタのコードを入力すると番組が呼び出されて視聴できる仕組み。

複数の番組を続けて閲覧することはできず、その都度この作業を繰り返す必要があります。前述したようにそこそこ混雑しているので、同じブースを確保できないなど利便性の面では問題アリですね。

ここから先はドラマのネタバレ感想です。残念ながら「エトロフ」ほどの緊迫感や感動がなかったデス……。

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ストックホルムの密使(上/下) 

佐々木譲のいわゆる「太平洋戦争三部作」は

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エトロフ発緊急電」→

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ベルリン飛行指令(レビューはコチラ)」と読んだのですが、完結編にあたる「ストックホルムの密使」は諸般の事情で読むことができていませんでした。

最近ようやくエンジンがかかり、完読。素直に泣けた!佐々木さんは最近警察ものを中心に書いてらっしゃいますが、歴史ネタでまた書いてほしいと改めて思いました。

小説の重要な登場人物のひとり、米内光政さん(首相経験者、帝国海軍最後の海軍大臣)は、読書するときの心得として

「本は三度読むべし。1回目は始めから終わりまで大急ぎで、2度目は少しゆっくり、3度目は咀嚼して味わうように読む」

とおっしゃったそうです。

エンターテインメントとして頭を空っぽにしても読める作品ですし、日本の近代史について考える材料でもあるし、「祖国」「愛国心」ってなんだろう、と問いかけられる作品でもあるし…。

現段階では「大急ぎ」が終わったところなので「少しゆっくり」をやってもうちょっと深く読みたいです。

ストックホルムの密使〈上〉 (新潮文庫)ストックホルムの密使〈上〉 (新潮文庫)
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ストックホルムの密使 (下巻) (新潮文庫)ストックホルムの密使 (下巻) (新潮文庫)
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日本が対米参戦する前だった「ベルリン」、その日本が真珠湾攻撃をする直前の攻防を描いた「エトロフ」。「ストックホルム」は第二次大戦末期が舞台で、日本の終戦工作をめぐるドラマです。

以下、ネタバレ。

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ジパング〈1~10巻〉 

身近な人の戦争体験というものは、身近であるということが逆にバリアとなってしまって意外に聞き出せないものです。母は満州生まれで、戦後たいへんな思いをして満州から引き揚げてきたことは知っていました。母本人は幼く引き揚げの記憶はありませんが、祖父母からは結局当時のことはほとんど聴けていません。

まして交際も少なく疎遠になっている遠縁の親戚となれば、なおさらです。

比較的最近、そうした遠縁の親戚のなかに海軍の特攻隊員として出撃していった人がいることを知りました。自分では意識してそうした日本の過去について調べたり読んだりしてきたつもりでしたが、うっすらとではありますが自分につながっている人に、そういう人が存在したということはかなり衝撃的なことでした。

ほかにもちょっといろんなことがありまして、最近、海軍に関する書籍をいろいろ読んでいます。専門家ではありませんから肩の凝らない小説などから入っていますが…。そんななかで知ったのが

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かわぐちかいじの「ジパング」です。海上自衛隊の最新鋭イージス艦「みらい」がミッドウェー海戦(1942年)まっただなかの海域に突如、タイムスリップしてしまうという物語。乗組員たちがタイムスリップを確信するのが、艦の近くに現れる戦艦大和というドラマチックな導入部で、一気に引きつけられました。

それも、タイムスリップのパラレルワールドものによくある「どうやって過去を変えずにぶじ現代へ戻るか」がテーマではありません。むしろ、歴史を語るうえでのNGである「もしも」を大胆に描いています。

「みらい」はタイムスリップして早々、戦場を離脱途中に被弾した戦闘機に搭乗していた帝国海軍将校を救助。その将校は情報参謀であったことから「未来」を知ってしまった彼が大胆な歴史の改変に動こうとします。目の前で死にかけていた彼を救いたい、と暗い海に飛び込み助けた海上自衛官は自分の選択に苦しみ、やがて能動的にこの情報参謀と対決していくのでした。

とりあえずネットカフェでざざ~っと10巻まで読みましたが、歴史をつくっていった実在の人物たちもどんどん出てくるのでやめられません!さしあたっては、山本五十六・連合艦隊長官は史実通りの死を迎えるのかどうか、ってあたりが気になりますが、現時点までで

ガダルカナルとキスカの「玉砕」(全滅)回避
満州国皇帝・溥儀暗殺

と大胆な展開です。続きを読む時間を、捻出しようと思います。

以下は単行本へのリンクになります(軽くネタバレ、メモ程度)。
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歴史のもしも 「もしも諸外国が五稜郭政府を承認していたら」 

icewine5さんのブログで紹介されていたのですが、icewine5さんは放送するBS11を視聴できる環境にないとのことで、30日の再放送を観てみることにしました。

「歴史のもしも」紹介ページ (BS11公式サイトより)

歴史のもしも」はBS11で日曜20時00分~放送(再放送は水曜15時00分~)

ってか、大河ドラマにぶつけてるんかい…www

デジタル放送が受信できるテレビをもっていますがさすがに、というかBS方面まではなかなか手が回らず、こんなチャンネルが存在することも最近まで知りませんでした。また、この「歴史のもしも」も番組内容がマニアックw 例えば

・もしも伊達政宗がスペイン艦隊を味方につけていたら

ってめっさマニアックなように思うんですが……。まぁ今回のテーマも「もしも桶狭間の合戦で信長が負けていたら?」みたいなのに比べるとかなりマニア度が高いと思うのですが…。

さて、番組は司会が麻木久仁子と安田清人。これに加えて今回はゲストとして榎本武揚の曾孫、隆充さんと、作家の富樫倫太郎さんを入れてのトークでした。榎本さんは言われてみればほのかに榎本武揚の面影を残しているようにも見えるジェントルマン。津軽海峡を「ツルガ海峡」と言い続けていたのは、ご愛嬌ですね。

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扱うテーマもマニアックなら番組そのものもかなりアナログなつくりで、司会とゲストが丸テーブルを囲んでひたすら喋ります。もちろんフリップや資料のたぐいは若干出てくるんですが、50分喋るだけ。これで保っちゃうんだから凄いんだけど、よほど歴史スキ、あるいは基礎知識がないととても軽い気持ちで観られる番組じゃないな、というのが印象でした。

特にゲストの富樫さんが終始苦虫をかみつぶしたような表情だったのが印象的で、出たくなかったのか(汗)?と思ってしまうほど。

とりあえず「もしも」の結果としては

・ロシアなどの協力のもと五稜郭軍は箱館戦争に勝利

・五稜郭政府は大日本帝国と友好条約を結び、隣国として発展

・アジア初の「共和国」として東アジアの盟主になる

というシナリオで議論がされました。まず軽く榎本さんの略歴をたどった上で、で、榎本さんが獄中で書いた種々のメモのコピーが榎本隆充さんから披露されました。達筆だしイラストも上手でビックリです。

さて。

私はあまり歴史に明るいほうではないので議論の内容を詳述するのは避けますが、まず、同じことばを話し基本的には同じカルチャーをもつ国が津軽海峡を隔ててふたつ並立する、というのはアリなのかどうかといえば基本ナシなんじゃないかなと思いました。だから、明治政府は台湾や江華島事件で海外に出る前にどうしても蝦夷地を陥落させないと納得しなかったんじゃないかと思うんですよね…。

ただ、最後に出演者一同が納得していた、もしも箱館政府が生き残っていたら日本の軍国主義の抑止力として働いたのではないか、という点についてはなるほどなぁ、と思わされる点もあり、興味深かったです。

夕凪の街 桜の国(原作) 

映画「夕凪の街 桜の国」を観て現代編の処理にどうしてもスッキリしなかったため、原作のコミックを買って読みました。




あっけないほどの短編であっという間に読んでしまったのですが哀しく重い内容です。それが暗くなりすぎないのは著者のこうの史代さんの筆致のためだと感じました。

また、意外だったのが広島市で生まれ育ったこうのさんが「ヒロシマ」からは逃げ続けていて、それが不自然で無責任だと思ったことがこの作品を生むきっかけになったとあとがきで書いていたことです。逃げ続けていたにも関わらず、というか避けていたテーマだからこそ、これだけ人の心をゆさぶるコミックを描けたのかもしれません。

さて、映画ですがやはり少し田中麗奈を前に出し過ぎて構成を失敗したのかなという印象です。

原作では基本的に時系列、つまり

皆実(麻生久美子)の昭和33年→母と祖母を相次いで失う七波(田中麗奈)の少女時代→成長した七波の広島への旅

となっているのですが、映画では現代の田中麗奈を描きつつ、田中麗奈の少女時代、さらには七波の父である旭の青年時代にフラッシュバックが飛ぶのでどうしてもやや散漫な印象がありました。

コミックではそこがスキッとしているので、七波の痛みもわかるし、親戚だから当然顔が似る皆実と七波の顔、ラストシーンの旭の台詞もすとんと当然落ちました。

余談ですが横浜駅の東口、そごうの入口で小規模ながら原爆に関する展示を行っていて、若い人たちが熱心に立ち止まって資料を見ていたのが印象的でした。もっとたくさんの人に読んでもらいたい作品だとしみじみしているところです。

ビンタ29+4回 鬼太郎が見た玉砕~水木しげるの戦争 

どちらかというと、8月に放送されるドラマや特集などにはアンテナを立てているほうだと思うのですが、なぜ戦後60年だった2年前よりもことしのほうがNHK、民放ともに関連番組が多いように感じるのでしょうか。

統計をしっかり持っていないのでなんともいえませんが、不思議です。

さて「ゲゲゲの鬼太郎」の巨匠、水木しげるさんの

総員玉砕せよ!―戦記ドキュメント (SHUEISYA HOME REMIX)総員玉砕せよ!―戦記ドキュメント (SHUEISYA HOME REMIX)
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を下敷きにしたドラマ「鬼太郎が見た玉砕」が放送されました。

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第二次大戦時、陸軍(海軍もそうかもしれんが)が組織としての体をなしておらず、いたずらに兵を消耗(=殺す)していったことは繰り返し

私の中の日本軍 (上) (文春文庫 (306‐1))
私の中の日本軍 (上) (文春文庫 (306‐1))山本 七平

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私の中の日本軍 (下) (文春文庫 (306‐2)) 一下級将校の見た帝国陸軍 (文春文庫) ある異常体験者の偏見 (文春文庫) 「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3)) 虜人日記 (ちくま学芸文庫)


などの本で読んでいました。古参兵による体罰も含めて。

とはいうものの、こんなにビンタ張られてたら敵を倒そうとかいう前にもうモチベーションがサゲサゲだろう、日本軍の下級兵士たちは、と思いました。

人を殺す、というのがお仕事となってしまう戦地で日々を過ごすというだけでも十分すぎるほど非人間的なのに、なぜ上官から常にこうして暴力を受け続けないといけないのか、という素朴すぎる疑問が。

とはいえ、そんなビンタなんていうのは「かわいらしい暴力」でもっと大きく理不尽な力が働き、死んだ兵士たちが「死んでも死にきれない」と現代を生きる水木しげる香川照之)に訴えたかったのは、なんだったのか。

以下、だらだらと。

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