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ベルリン飛行指令 

武揚伝(ぶようでん)で久しぶりに佐々木譲作品が気になりはじめ、ようやく読了しました。

ベルリン飛行指令ベルリン飛行指令
佐々木 譲

新潮社 1993-01
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もし、太平洋戦争開戦前に、零戦がドイツに飛んでいたら……というプロットがおもしろくないはずがないんですけど、当時の西アジアの情勢(インド、イラクなど)、世界史の教科書の該当ページを読むのの何倍も面白いです。ほぼ同時代を描いている「エトロフ発緊急電」もそうですが、物語を紡ぐ架空の登場人物も骨太でありかつ悲劇的。滑り出しが特異なので、ノンフィクションを読んでいるような不思議な気持ちになる小説でした。

物語はF1に初参戦したホンダの技術者が「自分はベルリンに飛んできたZERO(零戦)を見た」とドイツ人から話しかけられるところから始まります。そして、その技術者と知り合ったライターが調べた事実とは……と展開。

すでにヨーロッパでは第二次世界大戦が始まっており、対英空中戦で劣勢に立たされていたドイツが、中国戦線に投入されて大きな戦果をあげたと報告された零戦(零式艦上戦闘機=れいしきかんじょうせんとうき。Wikipediaの記述はコチラから)に興味をもち、日独伊三国同盟が結ばれたばかりの日本に実機を2機譲ってほしいと依頼していた。

東部(=対ソ〈ロシア〉)へ戦線を拡大したかったドイツ側は空輸にあたっては「南回り」ルートを日本側に指示。これを受けた日本サイドは東南アジアから西アジアにかけ、イギリスが植民地として握っている空域に零戦を飛ばすことを強いられます。

というわけで
(1)海軍省のなかで机上計画を立案実行した人たち
(2)現地(インド)で着陸と整備が可能な場所探しを命じられた陸軍の諜報員
(3)型破りの零戦パイロットのペア
(4)発注した側のドイツの作戦将校(元パイロット)

を軸にストーリーが展開し、息もつかせません。

私が好きな小説家はほかに高村薫がいますが、彼女もそうなんですけど佐々木さんは「ハンディキャップをもった人間」として日本人と外国人とのハーフを持ってくるんですよね。「エトロフ~」ではロシア人とのハーフ、この作品では父を海軍軍人、母をアメリカ人とした男性を零戦のパイロットとしてもってきています。このパイロットには妹もいて、横浜の病院で看護師として働いているという設定。

朝ドラの「純情きらり」でも描かれましたが日本が戦争に突入していく直前の息苦しさの描き方も秀逸です。

パターンとしては「エトロフ~」とよく似ている感じがしないこともありませんが、小説として組み立てた中に織り込まれた史実や歴史上の登場人物などにも違和感がありません。登場シーンはわずかですが井上成美航空本部長の描写などは、リーダーとはかくあってほしい、という姿も投影されているような。

"Zero"といえば外国人でも知っている人が多い、戦前の日本のテクノロジーの象徴ともいえる零戦を描いている「ロマンチ」な面もありながらこの作品もまた、戦争で失われた命について真摯に考える作品でもあります。

冒頭に書いたように西アジア地域の現代に続く不安定さは、きのうきょう始まった問題ではないのである、ということもまたしっかり描いているので、近現代史に興味のある方は一読をお勧めしたいと思います。

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戦争の影の中で光る男のロマン:ベルリン飛行指令

ベルリン飛行指令作者: 佐々木 譲出版社/メーカー: 集英社発売日: 1993/09メディア: - 佐々木譲の傑作冒険小説。 筆者にしては、珍しく北海道を舞台にしていないが、飛行士のロマンにあふれるすばらしい小説である。
  • [2008/07/31]
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