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切ないリアル感 すみれの花咲く頃 

私自身は特別宝塚のファンではないのですが、NHKのスペシャルドラマ「すみれの花咲く頃」を観ました。原作とはちょっと違うようですが、思っていた以上にとってもよくできた、切ない物語に仕上がっていて余韻が残ります。

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その余韻の中には磐梯山や猪苗代の冬の景色をたくさん使った映像が効果的に多用されていた、というのもありました。韓国のドラマは内容がイマイチでも撮影で使用している風景が美しくドラマのアラを2割ほど抹消してくれるという恐ろしい効果をもたらすことがあるのですが、丁寧なカメラワークはやはり、ドラマそのものを盛り上げる効果があるなぁ、と改めて実感した次第。以下ネタバレ。



寡聞にして知らなかったのですが主演の多部未華子さんが、透明で、けれどお腹の底にどうすることもできない鬱屈をためた少女、君子を好演。

なんと脚本は

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の鄭義信。あ、でも冷静に考えると内向きか外向きかの違いだけで、テーマが「自分ではどうすることもできないことに対する怒り」という意味では共通しているのかな…。

物語は高2の君子(多部未華子)が宝塚音楽学校の受験を目指して奮闘するうち、自分は本当は、何がしたかったのか(あるいはしたくなかったのか)ということに徐々に気づいてゆくというもの。

介護が必要な祖父(笑福亭松之助)、郊外型スーパーで長時間働き、娘と舅に目が行き届いていない母(秋野暢子)、自分が宝塚志望であることを知って奇異の視線を浴びせるクラスメートたちなどなどに、君子が苛立ちと孤立を深めてゆく様が鮮やかでした。

学校でのシーン、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」から

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「花のワルツ」を聴いているうち悪戯をした勇介(濱田岳)を雑誌でぴしゃりと殴る場面なんかすごくよかった。聴いていたのがMDでもMP3でもなく、ポータブルCDプレーヤーだというところも含めて。

一方で逃げられない現実にも君子は気づいていて、時に彼女を癒してくれるのが会津の美しい風景だったりします。そんなときに流れるのが

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「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲。もうね、これは反則w

君子を巡る地方の厳しい現実、みたいなものもさりげなく、嫌味のない範囲できっちりと閉塞感を描いていました。脇を固める絵沢萌子さんや宇梶剛士さん、サネイエ、じゃない江口のりこさんとか、どの人もすっかり「土地の人」になってるのが不思議です。

また、君子を励ましつつも合格への道は厳しい、と現実を見せる郡山のバレエ学校の先生(風花舞=元タカラジェンヌ)も、素敵だなぁと思いました。

ラストは若干、メロウに過ぎるかなぁ、とも思わなくもなかったけれど、みんなが応援してくれて宝塚音楽学校に入校!とならなかっただけ、よいのかもしれません。

短めながらよいドラマをありがとう、という感じです。

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