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コンフィダント・絆 

歌舞伎を観にいくようになってからバランス上?というかで生の舞台を意識して観にいくようになりました。しかしそんな中でも「三谷幸喜」と冠がつくととたんにチケットが入手困難になってしまいます…。そんななか先月の話になってしまいますが三谷さん作・演出の「コンフィダント・絆」というお芝居をPARCO劇場で観てきました。

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登場人物はゴッホ(生瀬勝久)、ゴーギャン(寺脇康文)、スーラ(中井貴一)、そしてシュフネッケル(相島一之)の4人の画家とムーランドラギャレットで働いていたモデル、ルイーズ(堀内敬子)というメンバー。

期待に違わず、尺は若干長いと感じましたが面白い舞台となりました。


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これを、動くことのできないベッドの上で読んだのが「名画たち」との出会いでした。これがきっかけで絵心はゼロの私が学生時代のあき時間は映画館か美術展に行きまくることになっており、間違いなく海外に行くと長時間の美術館内の歩き回りを厭わないいまの自分につながっています。

数多い画家のなかから一番好きなのがなんでスーラなのか。それはやっぱり「点々」が絵に見える感動なんだと思います。まだ果たせていない旅行先はシカゴでシカゴ美術館で門外不出の「ラ・グランドジャット島の午後」が観たい…。

というわけで私には、中井貴一が演じるスーラがどんな男として描かれているのか、とても興味がありました。

結論から言うと中井さんも含め、架空の登場人物であるルイーズと、後世に名を残す大きな存在にはならなかったシュフネッケルは別として、きっとこの3人はこんなだったんじゃないか、と納得ゆく出来映えになっていたのが印象的。

とはいえ、土曜の晩の「美の巨人たち」を観るのも好きですが、正直言うと私は絵を描いた画家が背負っていたものや人生観にはあまり興味がなくて(汗)、その絵が好きか嫌いかという直感で観てしまうことが多いです。

だからこその三谷さんの虚構の世界を十二分に満喫することができたわけで、例えば大河ドラマで

「近藤勇と坂本龍馬が相撲を取るなんて、ありえない設定だ!」

と怒ってしまう手合いには、向かない御芝居だったかもしれません。

舞台は、というと、それぞれのキャラクターをあぶり出しつつコメディータッチな前半と、ゴッホの芸術家としての才能に嫉妬してゆくスーラとゴーギャン、そしてそのふたりにも決して及ぶことができないシュフネッケルの3人の心の揺れ、ルイーズを巡る動きなど重さと苦さの加わる後半という二部構成でした。

私の大好きなスーラさんは想像していた通りの神経質でちょっと屈折したボンボンでしたw ここ数年ちょっとしたブームになっている

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伊藤若冲などもそうですけど、緻密に計算をしつくして細かい絵を描いてゆく人っていうのはこだわりも理屈もすごくあるはずで、それがゴッホなどの「繊細さ」とは全く異なる一種の偏執狂な部分をもちあわせてると思います。

そんなところを中井さん大熱演でした。「舞台の人」のイメージがあまりなかったこともあり非常に新鮮。

ゴッホの生瀬さんとゴーギャンの寺脇さんはもう、貫禄の域に達しています。やっとやっと、生で観ることができた生瀬さん。壊れやすい(繊細なのとキレやすいのと両方)キャラクター造形が秀逸でした。

舞台には登場しませんががロートレックを「ちび太」と呼んで嘲笑する場面がたびたび出てきます。

それは貴族の家に生まれ、才能もあって恵まれた環境で絵を描くことだけに集中できる彼への苛立ちも含めてなのですが、物真似などの感じがなんとなく、野田秀樹さんをイメージしてる印象があってついつい笑ってしまいました。

いくつか、三谷的こだわりであろうと推察しつつも納得がゆかなかった点は

・なぜゴッホのことを「フィンセント」と呼んでたのか。最初、席がちょと後ろのほうだったので聞き取れなかった。Vincentであるゴッホ、この時代、世界各国から画家たちが入ってきていたんだけど共通のことばがフランス語ならヴァンサンだと思うし、通じやすくするならヴィンセントだよね。

・台詞の通りは皆さんとてもよかったのに、音楽になると突然マイク使用ですごくうるさく感じてしまう。これは前にPARCO劇場で何かの芝居を観たときや新橋演舞場で「朧の森に棲む鬼」を観たときも感じたけど、大音量で音楽を流すことがデフォルトになってしまっていて、お客さんもそれに慣れてるのかな…。

この影響で、ルイーズの歌が脳みそに突き刺さってつらくなり、堀内さんのチャーミングな演技から20点ほど減点……。になってしまいました。

20分の休憩の後には三谷さん本人が出てきてバンドネオン(アコーディオン)をちょっと弾く趣向がありました。終演後、カーテンコールは3回。

三谷さんはこの舞台をつくりあげてゆく様子を朝日新聞の

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で語ってますが、堀内さん以外の出演者4人と三谷さんは全員が同い年の45歳で

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「シェーのポーズ」をした写真を全員が持っていることで楽屋で盛り上がり、若い堀内さんをどん引きさせたりしたらしい。

チケットを譲ってくれたお友だちに感謝したい夜でした。

コメント

プレビュー!

Sayopeeさんこんばんは。

うわー、プレビュー観たんですか、裏山です!PARCO劇場はPLAY会員になっているのですが今回プレビューの案内きてたかな(汗)

>>中井貴一さんファンとしては是非見ておきたかった舞台でして

ホントに全然バックグラウンドの違う4人が集まってきちんとあれだけ魅せるお芝居をつくってしまうんですから凄いですね~。来週大阪観劇ですか。いいないいな。

東京ではソールドアウトでしたが大阪公演は「切符まだありまっせ」案内きてましたもんね。ぜひぜひ、お戻りになったらレビューお待ちしております。

こんばんは。
ご無沙汰しております!

実は私も先月、「コンフィダント・絆」のプレビュー公演を鑑賞しました。ブログではネタにしていなかったですが…(^_^;)。
中井貴一さんファンとしては是非見ておきたかった舞台でして、見終えてかなり満足しました。
絵の世界はあまり興味がなかったのですが、あの舞台を見てテレビなどでゴッホなどの名前を聞くと、前より親近感が湧いている気がします。

もう1ヶ月以上経ってしまったのでrukoさんのように細かいレビューは書けそうにないのですが、来週大阪公演をまた見に行きますので、それが終わったら感想を書きたいと思います。
書けた暁にはTBさせていただきますので、よろしくお願い致します。

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コンフィダント・絆 大阪公演

約1ヶ月ぶりに 三谷幸喜さんの作品、『コンフィダント・絆』を観てきました。 前回
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