▼ 絶望からのbreakthrough 空飛ぶタイヤ
WOWOWの「連続ドラマW」として放送されていた「空飛ぶタイヤ」。5回、毎回釘付けでした。大企業vs中小企業。よくドラマ化に踏み切ったな~と思います。地上波の民放では、絶対にムリなんだろうな、大手自動車メーカーが大スポンサーなんだから。
「空飛ぶタイヤ」はWOWOWでの放送を終了しました。

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下敷きになっているのは、2004年に発覚したいわゆる「三菱ふそうリコール隠し(Wikipedia参照)」。横浜で走行中のトラックのタイヤが外れ、歩道を歩いていた母子を直撃して母親が死亡した事故がきっかけでした。
物語は
事故を起こしたトラックの所有者だった「赤松運送」の赤松社長(仲村トオル)が社員や家族に支えられながら事故の原因に迫り、ついに警察を動かす。一方、事故原因となった自動車メーカー「ホープ自動車」の社員たちも内部告発の形で会社を正常化しようとする。その戦いが丁寧に描かれました。
印象にのこったのは「コンプライアンス」(法令遵守)の使い方。最終回にホープ銀行の井崎(萩原聖人)がいいこと言いました。
「コンプライアンスとは、企業のためではなく人のためにある」。
本来、そうあるべきなんですよね。つまり法律を守ることはその法律によって保護されているヒトを守ることにつながると。でもこのコンプライアンスということばが当初、整備不良を疑われて警察の家宅捜索を受けた赤松運送にとっては「法令を遵守していない」ということになり、取引先からの受注停止、あるいはメインバンクからの「貸しはがし」に遭遇したりします。
こんな感じの流れ?
苦境に陥ってもへこたれない赤松のタフさにまず率直に脱帽しました。「のどから手が出るほどほしい」と思ったホープ自動車からの「手打ち金」1億円の受け取りを拒否し、ホープ自動車が起こした自社の事故と類似の事故をこつこつとしらみつぶしに調べてゆく。
その熱意が、メインバンク(それもなんとホープ銀行…)から債務の全額返済を要求されてぎりぎりのところで融資を申し出る「はるな銀行」との出会いにつながり、そして警察も入手できなかった決定的な証拠を書いたホープ自動車の内部資料の入手にもつながります。
その間には息子がいわれなき陰湿な嫌がらせにあい、妻(戸田菜穂)も精神的に追いつめられるといったことも起きますが、とにかく負けなかったという事実は、重いと思いました。
一方、リコール隠しをしていたホープ自動車のなかにも会社の体質を不満として動く人間が出てきます。「この会社が好きだから入った」と、職を賭して内部告発に踏み切るシステム担当の女性社員、杉本(尾野真千子)が秀逸でした。
彼女の告発、そして最終的なノートパソコンの持ち出しがなければ、警察も会社を牛耳る狩野(國村隼)を立件することは不可能だったはず。
ホープ側のもうひとりの主役、沢田(田辺誠一)は、最初「カスタマー戦略=苦情処理」という形で事件と赤松に接しますが、もともと車をつくりたくて会社に入ったものの夢がかなわないなか、内部告発に動き、狩野側に動きを封じられるという展開になります。
大手の自動車メーカーが「ヒンショウ(品質保証)」の名のもと、リコール隠しを組織的にやっていたということ。それが「企業と、社員数万人を守るため」というエクスキューズで行われていたことは、忘れてはいけない…。
そして、違法なリコール隠しを続けていながら、スポンサーとしての威力をちらつかせて、週刊誌記者の榎本(水野美紀)が書こうとしていたスクープ記事を潰したり、企業業績が芳しくないのにグループ企業のホープ銀行から多額の融資を引き出そうとしたり、もうめちゃくちゃ。
最終回、当初200億円の融資も業績からしたら難しいと井崎は判断してるのに、2000億円投入しろとしゃあしゃあと言う狩野にはホントびっくりでした。それをホープ銀行の巻田専務(西岡徳馬)は飲んじゃう、っていうんだから…。
最終的には、井崎は巻田専務に否定してたけどその2000億円融資のネタが会社を辞めてフリーになった榎本によって記事化され、グループ全体でホープ自動車を救うという計画が空中分解。そして狩野も神奈川県警によって逮捕されます。
大企業を相手に、個人は無力かといえば、赤松も、榎本も、井崎も、そして杉本や沢田も、自分の信念に従って動いたことで結果的に「悪」はただされる形になりました。
5回のドラマではそれぞれの動き、挫折を丁寧に追っていて本当に見応えがありました。特に、大きめの企業に勤めていると「組織の論理」で、なんとなく自分ではオカシイと感じていてもそのまま流されてしまいがち。それが自己嫌悪につながったりしますが、正しいことをすればそれが大きな力になることもある、そういう勇気も与えてくれる話かなと思いました。
とはいえ、ホープ自動車は「セントレア自動車」(トヨタかw)に吸収合併されて会社自体がなくなってしまいますが、三菱は、まだあるもんね……。
キャストもそれぞれいい仕事しててよかったんですが、正直、國村隼は連続ドラマWは「パンドラ」に続く登板で、見飽きたかも。あと、沢田の妻を演じた本上まなみも、もうひとつだったのが残念~。
「空飛ぶタイヤ」はWOWOWでの放送を終了しました。

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物語は
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印象にのこったのは「コンプライアンス」(法令遵守)の使い方。最終回にホープ銀行の井崎(萩原聖人)がいいこと言いました。
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本来、そうあるべきなんですよね。つまり法律を守ることはその法律によって保護されているヒトを守ることにつながると。でもこのコンプライアンスということばが当初、整備不良を疑われて警察の家宅捜索を受けた赤松運送にとっては「法令を遵守していない」ということになり、取引先からの受注停止、あるいはメインバンクからの「貸しはがし」に遭遇したりします。
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その熱意が、メインバンク(それもなんとホープ銀行…)から債務の全額返済を要求されてぎりぎりのところで融資を申し出る「はるな銀行」との出会いにつながり、そして警察も入手できなかった決定的な証拠を書いたホープ自動車の内部資料の入手にもつながります。
その間には息子がいわれなき陰湿な嫌がらせにあい、妻(戸田菜穂)も精神的に追いつめられるといったことも起きますが、とにかく負けなかったという事実は、重いと思いました。
一方、リコール隠しをしていたホープ自動車のなかにも会社の体質を不満として動く人間が出てきます。「この会社が好きだから入った」と、職を賭して内部告発に踏み切るシステム担当の女性社員、杉本(尾野真千子)が秀逸でした。
彼女の告発、そして最終的なノートパソコンの持ち出しがなければ、警察も会社を牛耳る狩野(國村隼)を立件することは不可能だったはず。
ホープ側のもうひとりの主役、沢田(田辺誠一)は、最初「カスタマー戦略=苦情処理」という形で事件と赤松に接しますが、もともと車をつくりたくて会社に入ったものの夢がかなわないなか、内部告発に動き、狩野側に動きを封じられるという展開になります。
大手の自動車メーカーが「ヒンショウ(品質保証)」の名のもと、リコール隠しを組織的にやっていたということ。それが「企業と、社員数万人を守るため」というエクスキューズで行われていたことは、忘れてはいけない…。
そして、違法なリコール隠しを続けていながら、スポンサーとしての威力をちらつかせて、週刊誌記者の榎本(水野美紀)が書こうとしていたスクープ記事を潰したり、企業業績が芳しくないのにグループ企業のホープ銀行から多額の融資を引き出そうとしたり、もうめちゃくちゃ。
最終回、当初200億円の融資も業績からしたら難しいと井崎は判断してるのに、2000億円投入しろとしゃあしゃあと言う狩野にはホントびっくりでした。それをホープ銀行の巻田専務(西岡徳馬)は飲んじゃう、っていうんだから…。
最終的には、井崎は巻田専務に否定してたけどその2000億円融資のネタが会社を辞めてフリーになった榎本によって記事化され、グループ全体でホープ自動車を救うという計画が空中分解。そして狩野も神奈川県警によって逮捕されます。
大企業を相手に、個人は無力かといえば、赤松も、榎本も、井崎も、そして杉本や沢田も、自分の信念に従って動いたことで結果的に「悪」はただされる形になりました。
5回のドラマではそれぞれの動き、挫折を丁寧に追っていて本当に見応えがありました。特に、大きめの企業に勤めていると「組織の論理」で、なんとなく自分ではオカシイと感じていてもそのまま流されてしまいがち。それが自己嫌悪につながったりしますが、正しいことをすればそれが大きな力になることもある、そういう勇気も与えてくれる話かなと思いました。
とはいえ、ホープ自動車は「セントレア自動車」(トヨタかw)に吸収合併されて会社自体がなくなってしまいますが、三菱は、まだあるもんね……。
キャストもそれぞれいい仕事しててよかったんですが、正直、國村隼は連続ドラマWは「パンドラ」に続く登板で、見飽きたかも。あと、沢田の妻を演じた本上まなみも、もうひとつだったのが残念~。
- [2009/04/27 23:50]
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