▼ 信念が奇跡に 遥かなる絆〈4〉
牡丹江の別れ
厳しい文化大革命のさなかに玉福=城戸幹(グレゴリー・ウォン)が帰国できたのは「奇跡」としか言いようがないと改めて思いました。迫害が監視以上の実力行使に及んでも不思議ではなかったのに……。というか、ドラマでは描かれなかったエグい迫害もあったのでしょうね。当時は政治もめちゃめちゃだったと思うのですが、本当に不思議。
「遥かなる絆」はNHKで土曜21:00から放送。
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文化大革命について、何か参考になる本はないかとamazonを探してみたのですが、比較的軽い気持ちで読めそうなものはなく………それだけまだ生々しい歴史ということなのかと思い、ちょと背筋が伸びました。
玉福は常に監視される状態が続き「別の道を歩いている」と職場でも噂が流され、ふたりの親友とも話せなくなり、酒浸りの暮らしになってしまいます。
と、一文で書いちゃったけど、親友たちは玉福をかばってけんかしてくれ、30年後に久枝(鈴木杏)にも「民族は違っても心はつながっていた」と胸を張って話してくれるアツイ人たちでした。
みんなが目立たぬように、崖から転がり落ちぬように、というような気持ちで暮らしていたに違いない時期に「何がなんでも日本に帰る」とたびたび公安局に直談判に行ったり日本に手紙を書いたり…本当にスパイ容疑とかでぽいっと「労改」とかに送られなくてよかったと思います。
酒浸りになってよれよれの玉福を立ち直らせたのはやっぱり淑琴さん(岳秀清)。子ども時代の玉福にも手をあげる場面はなかったはず。なのに
「日本のお父さんとお母さんに申し訳がない」
と叩いて叱咤するところでは涙が。
養母の暖かい気持ちに触れて、帰国はあきらめてふたりで暮らしてゆこうと決意して前向きになったところに、奇跡の帰国許可の知らせが届きました。
いざ帰国が決まると、やはりひとり淑琴さんを残してゆくことに心残りはたくさんある玉福。ひとりになってしまった後、生活はどうするのだろうと気がかりだったのですが、かなりの額のお金をたんす貯金していたんですね。
字が読めない淑琴さんが、玉福の日本の住所と本名の「城戸幹」を紙に書き残してほしいと頼むところ。結婚して子どもを産んで、ひとりは中国にほしい、と言うところ。ふたりで出かけ、凍った牡丹江のそばでふたり「植樹歌」を歌うところ…。
気丈にふるまっていた淑琴さんが牡丹江駅の駅頭で最後倒れてしまい「行かないでおくれ」と本音が出てしまった場面は本当に切なかったです。
淑琴さんがいなかったらのたれ死んでいたかもしれないし、農村の労働力としかみない誰かに拾われてただただ働くだけの人生になっていたかもしれない。すべての扉を開いてくれたのは淑琴さんだったということをいちばん理解していたのは玉福だったと思うので、別れの場面は身にしみました。
現代編では体調が回復した久枝が牡丹江で春節を過ごします。
ジェジェこと春華(シュンカ)さんがなぜ淑琴さんと10歳のときから暮らしていたかも話してもらいました。家が貧しかった春華さんは弟が生まれて生活力が足りない両親のもとでは暮らせなくなり祖母(淑琴さんの姉妹?)のところに預けられ、その祖母が亡くなったために牡丹江に住む淑琴さんのところへ移り、淑琴さんが死ぬまで同居した、と教えられました。
かつて淑琴さんが玉福の尽力で頭道河子村から牡丹江に移り、戸籍が農村から都市になったように、春華さんは淑琴さんのもとに身を寄せたことで都市の戸籍を得ることができて貧困から脱出できた、と語ります。
日本でのんびり暮らしていては想像もつかないような人生を歩んでいる「中国の親戚」たちが自分のことを親戚として受け入れてくれることに心を動かされる久枝が寝床で見せた涙が印象的でした。
春節の休暇を終えて吉林に戻ってきた久枝を迎えてくれたのは劉(フービン)。ふたりのわだかまりも消え、ちょっとイイ感じになってきます。劉の母親は元教師だったのがいま農業をやっているということで、劉は玉福が淑琴さんを牡丹江に呼び寄せたように、自分は母と東京で暮らしたいのだと夢を打ち明けます。
牡丹江でジェジェが話してくれた「貧困からの脱出」のことを思い出すと劉の母親は逆に都市部で暮らしていたであろう知的階級から農村へ、貧困へと転落してしまったことになるわけで…久枝に怒りをぶつけた劉の気持ちが少し理解できた気がしました。
とはいえ劉は、なぜ一般的な中国人が口をきわめて罵っている日本を将来の夢の行く先として選ぶのかが気になりますが、そこまでは描かれないかな…。
→この作品で描かれる残留孤児だった主人公の文化大革命は息を呑むほど過酷でした。内モンゴルの労改での生活、破傷風にかかって死にかけても日本人だという理由でなかなか治療をしてもらえず死にかけ……。そんな主人公を助けるのは養父の捨て身とも思える献身的な運動でした。
厳しい文化大革命のさなかに玉福=城戸幹(グレゴリー・ウォン)が帰国できたのは「奇跡」としか言いようがないと改めて思いました。迫害が監視以上の実力行使に及んでも不思議ではなかったのに……。というか、ドラマでは描かれなかったエグい迫害もあったのでしょうね。当時は政治もめちゃめちゃだったと思うのですが、本当に不思議。
「遥かなる絆」はNHKで土曜21:00から放送。
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と、一文で書いちゃったけど、親友たちは玉福をかばってけんかしてくれ、30年後に久枝(鈴木杏)にも「民族は違っても心はつながっていた」と胸を張って話してくれるアツイ人たちでした。
みんなが目立たぬように、崖から転がり落ちぬように、というような気持ちで暮らしていたに違いない時期に「何がなんでも日本に帰る」とたびたび公安局に直談判に行ったり日本に手紙を書いたり…本当にスパイ容疑とかでぽいっと「労改」とかに送られなくてよかったと思います。
酒浸りになってよれよれの玉福を立ち直らせたのはやっぱり淑琴さん(岳秀清)。子ども時代の玉福にも手をあげる場面はなかったはず。なのに
「日本のお父さんとお母さんに申し訳がない」
と叩いて叱咤するところでは涙が。
養母の暖かい気持ちに触れて、帰国はあきらめてふたりで暮らしてゆこうと決意して前向きになったところに、奇跡の帰国許可の知らせが届きました。
いざ帰国が決まると、やはりひとり淑琴さんを残してゆくことに心残りはたくさんある玉福。ひとりになってしまった後、生活はどうするのだろうと気がかりだったのですが、かなりの額のお金をたんす貯金していたんですね。
字が読めない淑琴さんが、玉福の日本の住所と本名の「城戸幹」を紙に書き残してほしいと頼むところ。結婚して子どもを産んで、ひとりは中国にほしい、と言うところ。ふたりで出かけ、凍った牡丹江のそばでふたり「植樹歌」を歌うところ…。
気丈にふるまっていた淑琴さんが牡丹江駅の駅頭で最後倒れてしまい「行かないでおくれ」と本音が出てしまった場面は本当に切なかったです。
淑琴さんがいなかったらのたれ死んでいたかもしれないし、農村の労働力としかみない誰かに拾われてただただ働くだけの人生になっていたかもしれない。すべての扉を開いてくれたのは淑琴さんだったということをいちばん理解していたのは玉福だったと思うので、別れの場面は身にしみました。
現代編では体調が回復した久枝が牡丹江で春節を過ごします。
ジェジェこと春華(シュンカ)さんがなぜ淑琴さんと10歳のときから暮らしていたかも話してもらいました。家が貧しかった春華さんは弟が生まれて生活力が足りない両親のもとでは暮らせなくなり祖母(淑琴さんの姉妹?)のところに預けられ、その祖母が亡くなったために牡丹江に住む淑琴さんのところへ移り、淑琴さんが死ぬまで同居した、と教えられました。
かつて淑琴さんが玉福の尽力で頭道河子村から牡丹江に移り、戸籍が農村から都市になったように、春華さんは淑琴さんのもとに身を寄せたことで都市の戸籍を得ることができて貧困から脱出できた、と語ります。
日本でのんびり暮らしていては想像もつかないような人生を歩んでいる「中国の親戚」たちが自分のことを親戚として受け入れてくれることに心を動かされる久枝が寝床で見せた涙が印象的でした。
春節の休暇を終えて吉林に戻ってきた久枝を迎えてくれたのは劉(フービン)。ふたりのわだかまりも消え、ちょっとイイ感じになってきます。劉の母親は元教師だったのがいま農業をやっているということで、劉は玉福が淑琴さんを牡丹江に呼び寄せたように、自分は母と東京で暮らしたいのだと夢を打ち明けます。
牡丹江でジェジェが話してくれた「貧困からの脱出」のことを思い出すと劉の母親は逆に都市部で暮らしていたであろう知的階級から農村へ、貧困へと転落してしまったことになるわけで…久枝に怒りをぶつけた劉の気持ちが少し理解できた気がしました。
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→この作品で描かれる残留孤児だった主人公の文化大革命は息を呑むほど過酷でした。内モンゴルの労改での生活、破傷風にかかって死にかけても日本人だという理由でなかなか治療をしてもらえず死にかけ……。そんな主人公を助けるのは養父の捨て身とも思える献身的な運動でした。
- [2009/05/10 08:13]
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