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ストックホルムの密使(上/下) 

佐々木譲のいわゆる「太平洋戦争三部作」は

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ベルリン飛行指令(レビューはコチラ)」と読んだのですが、完結編にあたる「ストックホルムの密使」は諸般の事情で読むことができていませんでした。

最近ようやくエンジンがかかり、完読。素直に泣けた!佐々木さんは最近警察ものを中心に書いてらっしゃいますが、歴史ネタでまた書いてほしいと改めて思いました。

小説の重要な登場人物のひとり、米内光政さん(首相経験者、帝国海軍最後の海軍大臣)は、読書するときの心得として

「本は三度読むべし。1回目は始めから終わりまで大急ぎで、2度目は少しゆっくり、3度目は咀嚼して味わうように読む」

とおっしゃったそうです。

エンターテインメントとして頭を空っぽにしても読める作品ですし、日本の近代史について考える材料でもあるし、「祖国」「愛国心」ってなんだろう、と問いかけられる作品でもあるし…。

現段階では「大急ぎ」が終わったところなので「少しゆっくり」をやってもうちょっと深く読みたいです。

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日本が対米参戦する前だった「ベルリン」、その日本が真珠湾攻撃をする直前の攻防を描いた「エトロフ」。「ストックホルム」は第二次大戦末期が舞台で、日本の終戦工作をめぐるドラマです。

以下、ネタバレ。

「ベルリン」で安藤啓一大尉が零戦で東から西にたどったユーラシア大陸を、今度は西から東へ戻る旅が下巻のクライマックスで、これはこれでスリルの連続で、おもしろいのですが…

私はむしろ、上巻で多く描かれた東京での山脇順三・海軍省書記官と海軍省幹部(米内海軍大臣、井上成美海軍次官、高木惣吉少将など)たちの奮闘と、アメリカが攻め込んできてつるべ落としのように戦局が悪化してゆく描写に惹かれました。

山脇が終戦工作を始めることを告げられて初めて米内海軍大臣、井上次官、そして及川古志郎軍令部総長に対面したとき、零戦の空輸作戦の話となり、米内さんと及川さんはふたりでこんな詩の一部を口ずさみます。

「見よ今日もかの青空(原文ママ)に 飛行機の、高く飛べるを」

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米内大臣と及川総長がともに、石川啄木と同窓の盛岡中学の出身であるところから出た場面ですが、鳥肌たちました。石川啄木の詩集まで発禁になっていたということもこの小説読んで初めて知りました。

それにしても、小説では海軍の首脳部が戦争の終結に動き出したのは1944年の8月ということになっています。それから実際に戦争が終わるまでほぼ1年がかかり、日本中が焼け野原になって、多くの命が失われたことを考えると本当にため息しか出ません。

なんで、そんなに時間がかかってしまったのか、というところを、東京、中立国のスウェーデンの首都ストックホルム、ベルリンなどなどあちこちに飛びながら描いてゆくのでいつもの通り、ブレーキがかけられません…。

登場人物も世界を股にかけていてかなり多いのですが、それぞれが「祖国」に対してどんな想いを持っているのか、ということが説教臭くなくさりげなく入れられていて、その想いが大陸を横断する原動力になってゆく、という描き方が、素晴らしい。

その一方で、ストックホルムで入手した日本の戦局にかかわる重大情報。暗号電を打電する海軍の大和田武官の必死の想いは、海軍軍令部の情報ルートの途中で、その重要さと衝撃度合いのために握りつぶされてしまう。

なぜ?

大和田武官のモデルになったのはスウェーデン駐在の小野寺信・陸軍駐在武官…ですよね。小野寺情報も思い切り陸軍のメインストリームからはネグられまくられていたとのこと。

ちなみにWikipediaなどによると、奥さんの百合子さん(=静子さんのモデル)は、60歳を過ぎてからあのトーベ・ヤンソン作品の翻訳なども手がけた方だそうです。


→百合子さんが戦争中を振り返って書いた本。

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さて、「ストックホルム」の"主人公"は、本来「密使」になる森四郎なんだと思うんですが、彼は「苦労人の遊び人のコスモポリタン、ついたあだ名はバロン(男爵)」という魅力的な造形ではあるんだけど、作品全体としては、私のなかでは、やや空気なんですよね…。

相棒として旅をすることになるポーランド人の「ドクトル」ことコワルスキ(クリコフ)のキャラクターが強力すぎるというのも、あるのかも。四郎さんは、エリート海軍士官の妻でありながら自分を差別することなく暖かく接してくれた静子夫人のために一肌脱ごう、と密使役を引き受けるんだけど、実はドクトルに引っ張られるような形でもあるので。

そんな四郎さん、さりげなくベルリンで安藤大尉と遭遇!安藤さんキタ~!って感じでまたゾクゾク。

零戦の空輸後、ドイツからの帰国ができなくなってしまった安藤大尉はドイツの空軍学校で教鞭をとっているという設定で、トランペットも披露してくれ、妹の真理子(=山脇夫人)に届くように、と四郎にある物を託します。

そして、ラストシーンも、安藤さんが持ってゆきます……。8月15日はとにかくよいお天気だったことはよく覚えていると終戦を満州で迎えた祖母から聴いたことがありますが………涙。

歴史のタイムラインに沿って物語が展開するので、事実上東京初の空襲である中島飛行機への爆撃、1945年3月10日の東京大空襲、広島への原爆投下、終戦阻止をもくろむ陸軍の一部によるクーデターなどがしっかり入ってます。

「エトロフ」で執拗に主人公のケネス斉藤を追跡する磯田憲兵が今回も登場し、予想しなかった行動をとります。これもまた磯田さんならではの選択・行動なのですが、山形の貧しい小作農の出身で「3食きちんと食事ができるから」という理由で軍隊に入り叩き上げの職業軍人になった彼のバックグラウンドが上司の秋庭少佐から語られます。

本作ではこの秋庭さんも「エトロフ」のときよりキャラクターがはっきりと描かれます。陸軍、それも憲兵という特殊な立場にありながら、客観的に情報を判断、思考できる人間として描かれ、好感度がアップしました。

「エトロフ」に関してはNHKが

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→VHSしかないっておかしくない?

「エトロフ遥かなり」というタイトルでドラマ化していたのをオンタイムで観ました(1993年作品)。っていうかそれがきっかけで原作を読んだんですが…「ストックホルム」も映像化されていたのは知りませんでした。

主演は永沢俊矢と沢口靖子(四郎とドクトルと旅をすることになるオペラ歌手、小川芳子)という「エトロフ」と同じ組み合わせのようなので、必ず観たいと思います。近々レポシマス!

コメント

お時間できましたら、是非

icewine5さん、こちらにもありがとうございます。

この三部作はicewine5さんだったら絶対読みがいあると思うのでお時間あったらぜひ挑戦してください。私は入口が沢口靖子のドラマだったので変則的に「エトロフ」からでしたが、順番としてはもちろん「ベルリン」→「エトロフ」→「ストックホルム」でよいと思います。

恐らくひっかかりどころとしてはicewine5さんが書いていらっしゃる通り歴史上の軍人などの予備知識がないと、ってところだと思いますが、逆にわかるとおもしろさが増す、と思っていただければ。

榎本さんにもかなり傾倒しましたが、今わたしがハマっているのは日本海軍の幕を引いた最後の海軍大臣、米内光政さんだったりします。「ストックホルム」で米内さんはそれほど出番は多くありませんが後半、彼をめぐって動きがあり、それがひとつのクライマックスになっています。

人間には「天命」みたいなものがあるのだと思いますが、軍人/政治家(昭和15年に総理大臣も短い間ですが経験)としての能力とは別に、この方もまた、長身で男らしい、女性にモテモテw の方だったんだとか。

読み応えありそうですね!

rukoさん、こちらにもこんばんは。

佐々木譲さんの太平洋戦争モノ、「武揚伝」と同じく骨太な作品なのですね。

幕末、明治ぐらいまでの歴史に比べて、第二次世界大戦前後の歴史は、年表に書いてある出来事の積み重ねの知識しかなくて、事実の裏側とか実際にその時期に活躍した政治家や軍人については、私、あまりイメージを持っていないのです。

武揚伝の後に、何か読んでみようと思いつつ、結局まだ実行できていませんが、rukoさんのレビューを拝見したら、この三部作はエンターテイメントとしても、歴史のお勉強としても良さそうだし、ちょっと読んでみたくなりました。
そのうち、「ベルリン飛行指令」から読んでみようかしら・・・

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